すららコーチが教える!発達障害の家庭学習で大切なこと
パソコン・タブレットを使ったeラーニング教材「すらら」では、現役の塾の先生である「すららコーチ」が直接子どもを見守り励ます保護者の努力を支えるサポーターとなります。塾の経験を活かして1人ひとりの特性を理解し学習計画を立て、勉強の相談にのったり、保護者にアドバイスをお伝えします。今回は、発達障害の子どもを多く担当しているすららコーチの多賀谷扶左子先生に、家庭学習で大切なことを伺いました。
学習教室クローバー 多賀谷先生
千葉県松戸市で、すららを使った学習塾クローバーを運営。
自身のお子さんも学習障がい。一般の塾ではなじめない子どもたちのことを理解し、特性を活かした指導で保護者からの信頼も厚い先生。
まずは学習の遅れ具合と、障害の特性を理解することから始めます
― 発達障害のお子さんを担当する際、大切にしていることは何ですか?
発達障害のお子さんは、ほとんどの場合学習に遅れがあります。全教科大きく遅れている子、教科ごとの差が大きい子などさまざまなので、まずは遅れの度合いをしっかり確認するようにしています。
それから、障害の特性を詳しく教えてもらいます。学校や家での様子などを保護者から聞き取りして、その子に合った学習の進め方を考えていきます。
― 発達障害の子は、家庭学習がスムーズにいかないことも多いのではないですか?
もちろん、スムーズにはいきません。集中力が続かない子が多いので、最初の頃はイライラしてパソコンに当たるとよく聞きます。でも、そこで保護者が諦めてしまったらそれまでなんです。
私は、問題は起こって当たり前と考えています。勉強が大の苦手な子、変化することが苦手な子、5分もじっとしていられない子たちなので、当然ですよね。たとえ子どもが「もうやりたくない!」と言ったとしても、そうなることを前もって予測しておけば、保護者も簡単には諦めずに済むのかなと思います。最初はつまずいても、保護者が根気よく向き合っていけば、必ず子どもは変わっていきます。すららコーチは、保護者を支えるアドバイザーなんですよ。
親子関係が良いほど、子どもの学力も上がります
― なるほど。保護者の向き合い方が大切になってくるんですね。
その通り。私は、子どもの学力を上げるためには親子関係が一番大切だと思っています。実際、親子関係が良ければ良いほど子どもの勉強の量も多く、理解も早いです。
塾に通っている場合は、塾の先生が褒めたり励ましたりすることもできますが、家庭学習の場合は保護者がその役割を担わなければなりません。子どもは、基本的に勉強が好きではありません。それでも勉強するのは、「お母さんが見ているから」「お母さんに褒めてもらいたいから」といったことがモチベーションになっているからだと思います。
勉強を教えるという部分はすららがやってくれるので、あとは褒めたり、励ましたりしてどれだけ子どもをヤル気にさせていけるかだと思います。
― 多賀谷先生の考える「理想の親子関係」ってどんなものですか?
勉強するときに、親が部屋にいても嫌がらない関係かなと思います。年齢が高くなるにつれて、一人で部屋にこもりがちになりますが、そうなると様子が見られないですし、勉強すると言いながら別のことをやっていたりすることも多いんですよね。すららを始めたばかりの保護者には「“すららをやっている様子を見て報告してください”と、すららコーチからお母さんに宿題が出されている」と子どもに言うよう伝えて、勉強の様子を見てもらっています。
あとは、わからないことがあったときに、子どもが「ここがわからないんだけど」と親に言える関係が理想ですね。理想の親子関係を築くためには、もちろん普段の接し方が大切です。子どもの好きなゲームやアーティスト、学校の話などを聞く中で、「勉強で困っていることない?」と切り出すなど、普段から話しやすい関係を築けるといいなと思います。
― 親も変わっていく必要があるということですね。保護者の悩みを聞いていると、つい「勉強しなさい」と叱ってしまうという声が多く聞かれます。声のかけ方のポイントはありますか?
最初はとにかくハードルを下げて、褒めるところを見つけることだと思います。1時間集中できないんだったら、まずは30分にして習慣づけていきます。30分できたら、しっかり褒めてあげてほしいです。たとえ30分できずにイライラし始めたとしても「今日はもういいよ」という親の余裕も必要です。昨日できなかった問題が解けたとか、平均より早く解けたとか、褒めるところはたくさんあると思います。
そのためには、やっぱり親が見ているということが一番です。すららの保護者管理画面では学習履歴やかかった時間がわかるようになっているので、たとえ付きっ切りで見られなくても、褒める部分を見つけることができますよ。
― 「勉強したらご褒美をあげる」ということについて、保護者にも賛否あるようなのですが先生はどうお考えですか?
その子の特性にもよりますが、私はご褒美があってもいいと思います。ご褒美といっても、ジュースとお菓子少しでいいんです。「終わったらこれを食べようね」と用意しているのを見せると、そのためにがんばる子もいます。
たとえば、目標を紙に書き出して、できたらそれを消していくというようなことがご褒美の代わりになる子もいます。一つひとつ消していくことが達成感につながるようですね。この方法は、学習計画に沿わず、バラバラに勉強してしまう子にも有効です。
― 先生が担当されている発達障害の子を持つ保護者には、実際にどのようなアドバイスをしていますか?
たとえば1ヶ月程前に入会されたお子さんは、ADHDとアスペルガー症候群のある子で、やっぱり最初はイライラしてパニックになってしまったみたいでした。そこで「時間を30分にしてみてください」とお母さんに伝えたところ、2、3週間後には毎日1時間できるようになったと連絡がきました。
ハードルを下げて達成感を感じさせてあげることで、もうちょっとやりたいという気持ちになったようです。パニックになったときは無理にやらせようとせず、クールダウンの時間をとるようにというような対処法も伝えています。
一人ひとりに的確にアドバイスするためには、すららの学習履歴画面が欠かせません。たとえばレクチャーを短時間で終わらせてしまいミスが多い子は説明をきちんと聞いてないなとか、数学の問題をすごく早く解いてミスしてしまう子はちゃんと計算をしていないなとか、履歴をみるとだいたいわかるんです。保護者にはそれを伝えるとともに「わからないまま進めているのは本人も苦しいと思うので、その辺を支えてあげてください」と、本人も辛い思いをしているのだということを伝えるようにします。そのうえで、具体的な改善策をお伝えして、保護者に関わってもらうようにしています。
子どもの可能性を開花させてあげたいすべてのお母さんへ
― 発達障害のお子さんの勉強に悩んでいる保護者は多いと思います。先生から何かアドバイスはありますか?
アメリカでは、IEPといって、発達障害の子どもに対して脳心理学の先生やカウンセラー、学校の先生などがチームを組んで1人ひとりに合わせたカリキュラムを組むプログラムがあります。しかし、残念ながら現在の日本はそこまでいっていません。そのため、支援教室などに行くことが多いのですが、そこでは勉強面で十分な支援が受けられるかというとそうではないのが現状です。発達障害は、知的障害ではありません。勉強すれば高校へも行くことが可能です。
特にアスペルガー症候群(現・自閉症スペクトラム障害)の子は、教室ではパニックを起こしたりして適応できないことが多いですが、実際は記憶力も高く、頭のいい子も多いんです。その子の将来の可能性を開花させてあげたいというのが親心ですよね。すららで学ぶことで、普通教室に入ることができたら、その子が将来自分のやりたいことを見つけていくのに役立つと思います。そういう子がふえたらいいなと思っています。